耐震工事を検討しよう

2016/06/14

専門機関に聞く★マンションの耐震化ステップ〜JASOインタビュー〜

第3回:「耐震精密診断」とは?耐震改修工事までに必要なことはコレだ!

 

「耐震簡易診断」では、構造耐震指標値(Is値)の算出や、建物の弱いところが指摘されることがわかりました(第2回:「耐震簡易診断」とは?診断方法や、わかることを解説!)。「耐震簡易診断」で、さらに詳しく調べる必要性があると判断されると、「耐震精密診断」を受けることを推奨されます。「耐震精密診断」について、引き続き建築耐震アドバイザー坪内真紀さんにお聞きしました!

‐「耐震精密診断」は、どんなことをするのですか?

簡易診断では目視調査や机上計算でしたが、「耐震精密診断」では建物のコンクリートを採取して強度などを計算 します。また、診断結果は第三者のチェックを受けて、評定書を取得します。自治体から診断費用の助成金を受ける場合は、評定書取得が助成金交付の条件となっていることが多いんですよ。

‐「耐震精密診断」は、誰がするんですか?

「耐震アドバイザー派遣」、「耐震簡易診断」に引き続いて同じ担当者が診断することが多いです。担当者が変わることはありますが、いずれにせよ、マンションの耐震診断は高度で特殊な技術や知識が必要なので、構造設計一級建築士などの資格を持つ専門家が行います。

コンクリート採取イメージ

マンション組合総会イメージ

 

‐診断を受ける際には、何を準備すればいいですか?

いろいろとありますが、大切な準備として、「耐震精密診断」を受けるには、分譲マンションならば総会の決議(合意形成)が必要です。「耐震精密診断」の内容は、マンションの売買時に必ず告知する必要がある「重要事項説明」の項目となるので、資産価値に影響が出ます。もちろん簡易診断に比べると費用もかかりますので、どこから捻出するのかなど、総会で決議する必要があります。総会の決議を通すために、「耐震アドバイザー派遣制度」を利用して、アドバイザーの助言を受けながら取り組む管理組合も多いです。

‐診断結果が出るまでに、どのくらいの期間がかかりますか?

 

 

現場調査は1〜2日で終わります。事前に調整してコンクリート採取の場所と調査日程を決め、掲示板や配布チラシで住人に告知しておきます。診断結果は、まず診断に3〜6ヶ月ほどかかり、そこから評定を取るために2~3ヶ月かかります。管理組合にとっては、総会の決議を通すことも含めると1年がかりの事業となります。

 

‐「耐震精密診断」では、何がわかりますか?「耐震簡易診断」との違いは?

 

耐震精密診断資料イメージ

簡易診断が総合的な概略診断なのに対し、精密診断は構造の弱点が具体的にわかります。例えば、地震の際は“この柱”に力が集中して崩れる可能性があるため、“この柱”を補強する必要がある、と指摘できます。また、Is値(構造耐震指標)などの数値も、より正確に出すことができます。耐震基準を満たすために、強度がどの程度足りないかがわかるので、ざっくりした耐震改修工事の費用も出すことができます。工事の費用は、工法を決めて、施工会社に見積もりを取らないとわからないところがあるので、あくまで“ざっくりした費用”です。

‐耐震改修工事が必要だとわかっても、費用面でなかなか踏み出せないマンションも多いですよね。

費用をどのように工面するかで、合意形成が取れずに計画が立ち止まってしまう事例は数多くあります。というのも、耐震診断をすることが多い築35年以上のマンションは、排水管やサッシの工事など、お金のかかる大規模修繕が必要なことが多く、修繕積立金の支出が増える時期に重なります。さらに、そこにプラスして耐震改修工事の費用を出せるマンションの管理組合は、なかなかありません。これまでの修繕状況、積立金、見込める助成金も、マンションによって異なりますので、出来るところから段階的に耐震化することも一案です。どんな耐震補強計画を立てていけばよいか、JASOは専門家 としてアドバイスします。

JASOの建築耐震アドバイザー 坪内真紀さん

‐管理組合にとって、費用以外の耐震改修工事にこぎつけるためには、どんなハードルがありますか?

助成金を受けたり、金融機関から借り入れをしたりするためには、マンションの管理体制が問われることがあります。会計や管理規約に不満があれば、是正しなければならないなど、マンションによっていろいろな課題が出てきます。JASOは耐震改修工事を実現するために、そのマンションに合う作戦を立てて計画を練り、合意形成ができるまでの支援をしていきます。

 

‐耐震診断を行っている機関や企業は他にもありますが、JASOの耐震診断の特徴は?

最終的には、安心して暮らせる安全なマンションに住んでいただくことがゴールです。そのゴールを見ながら耐震診断をしていきます。JASOには様々な知見を持った専門家が集まり、耐震簡易診断報告書の内容が適切かどうかを審査する審査会、耐震精密診断の内容が法律や診断基準に照らして問題ないかを判定する判定会議などのチェック機能があることも特徴です。また、事例も多いので、似たようなマンションの事例をご紹介しながら、いろいろとアドバイスできるのもJASOならではだと思います。

 

『耐震精密診断』では、構造的に弱いところが具体的にわかるんじゃ! JASOの耐震診断は、その後の耐震補強工事に至るまでの計画を立てるとき、マンションで合意形成を図る際の相談にも乗ってもらえるのが心強いぞ!

さて、次回は「耐震⼯事成功のポイント~ホテル編~」の予定じゃ!
大規模になる宿泊施設の耐震診断と耐震工事を成し遂げた、ホテル花巻の担当者に突撃インタビューじゃぞ!

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