耐震工事を検討しよう

2016/06/07

専門機関に聞く★マンションの耐震化ステップ 〜JASOインタビュー〜

第2回:「簡易耐震診断」とは?診断方法や、わかることを徹底解説!

「私のマンション、大きな地震が来ても大丈夫?」と不安に感じたら、まず「耐震アドバイザー派遣」で、耐震診断が必要かどうかのアドバイスを受けられることがわかりました(第1回:「耐震アドバイザー派遣」とは?何がわかるの?)。

耐震診断が必要なことがわかったら、次は「簡易耐震診断」を行うことを「NPO法人 耐震総合安全機構(JASO)」では推奨しています。「耐震簡易診断」について、引き続き建築耐震アドバイザー坪内真紀さんにお聞きしました!

 

 

 

‐「耐震簡易診断」は、どんなことをするのですか?

建築、設備、構造の3つの観点から簡易的に診断を行います。建築面では、避難経路が適切に確保されているかどうか、玄関扉、天井、タイル、塀などの耐震安全性についてチェックします。設備面では受水槽、ポンプなどの固定状況や、配管の状態を目視でチェックして、地震により建物が揺れたときのリスクを評価します。構造面では、設計図を元にして、机上ではありますが概略の構造計算を行い、耐震性能を評価します。

 
  

 

‐なぜ、精密診断の前に簡易的な診断を行うのですか?
「耐震精密診断」は、数百万の費用が必要となることが多く、時間もかかります。また、マンションの場合は総会での同意が必要なので、ハードルが高いのです。精密診断を受ける必要があるのかどうかを、まずは「耐震簡易診断」で判断することをおすすめしています。

‐ 「耐震簡易診断」は、誰がするのですか?

JASOでは、通常「耐震アドバイザー派遣」で派遣された人が引き続き診断しています。

‐診断を受ける際には、何を準備すればいいですか?

「耐震アドバイザー派遣」と同様に、設計図や竣工図、改修工事の記録など、図面を用意してください。現地での診断の際は、屋上の機械室を開けてもらったり、受水槽のある場所に案内してもらったりする必要があるので、立ち会っていただきます。よほど大きなマンションでない限り、半日〜1日で終了します。

設計図や竣工図、改修工事記録などを準備し、機械室や受水槽に案内します

‐「耐震簡易診断」でわかることは?

構造耐震指標値(Is値)がわかることが1番大きいですね。Is値とは、建物のバランス、劣化状況、粘り、強さを総合的に評価し、数値化したもので、このIs値が0.8以下ならばより詳細な耐震性能を診断する必要があると判断して、「耐震精密診断」をおすすめします。「耐震精密診断」の見積書を出しますので、どのくらい値段がかかるのかもわかります。

また、建物や設備の弱いところや危険なところもわかります。実際に「耐震簡易診断」を受けてみると、不安に感じていたところは問題がなく、思いもよらないところに弱さや危険が潜んでいたことがわかるケースもあるんですよ。

 

‐意外なところに弱点があったのがわかるなんて、人間で言うと「人間ドッグ」に似ていますね。

まさにその通りですね。「耐震簡易診断」の結果は、報告書を出しますが、人間ドッグで見つかった異常を、改めて精密検査で細かく調べるように、「耐震簡易診断」で見つかった弱さを、「耐震精密診断」で細かく調べることをおすすめしています。

 

‐報告書の作成には、どのくらい時間がかかりますか?
 また、どのようなアドバイスをしてもらえるのでしょうか?

現場診断は1日ですが、計算したり審査を受けたりするので、報告書の提出までには3ヶ月ほどかかります。写真などで弱いところを指摘したり、具体的なアドバイスをすることができます。耐震性が低いと判断すれば、耐震補強工事を前提とした「耐震精密診断」を受けることをおすすめしますが、地震対策は耐震補強が全てではありません。例えば、地震で玄関が破壊され外に出られなくなる可能性があるなら、耐震ドアへの交換や、それが無理なら玄関にバール(玄関をこじ開ける工具)を備えたほうがいい、とお話することができます。建物の改修というハード面で対応できない場合は、その建物にあった行動の仕方等のソフト面で対応すれば、完璧ではないけれど、できることはいろいろとあります。

 

‐ 「耐震簡易診断」にかかる費用は?

 

マンションの規模によっても違うのですが、だいたい数十万、というところです。「耐震簡易診断」については助成金が出る自治体もあるので、そのあたりは「耐震アドバイザー派遣」のときにアドバイスをしています。

 

‐報告書の説明会は開いてもらえますか?

 

もちろんです。報告書をはお持ちして、ご説明します。分譲マンションならば管理組合の呼び掛けで興味のある人にも集まっていただき、説明するケースが多いですね。賃貸マンションの場合は、オーナー様だけでなく、オーナー様のご家族全員に集まってもらって説明させていただけると、その後の流れがスムーズだと思います。「耐震精密診断」が必要だと判断した場合は、そのお見積りとともに、なぜこれだけ費用がかかるのか、申請できそうな助成金はどの程度か、などをお話します。

 

 

JASOの建築耐震アドバイザー 坪内真紀さん

構造耐震指標値や、弱いところがわかる『耐震簡易診断』は、自分のマンションを知る意味でも、重要なステップ。 具体的な“住まいのそなえ”のアドバイスがもらえるのも、うれしいポイントじゃ!

さて、次回はいよいよ「耐震精密診断」について。
費用の工面や組合での合意形成など、様々な問題について詳しく話してもらったぞ!

耐震工事に関心のある人は必見じゃ!

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