耐震について知ろう

2016/08/01

事例でわかる★耐震事成功のポイント〜ホテル編〜1

第1回:自慢の眺望を壊さない!耐震法の選び方

 

築年度が古いホテルや旅館など宿泊施設の多くが、耐震工事が必要であると言われていますが、工事まで至るには費用や営業面での課題が多くあります。しかし、大震災が起こった時のことを考えると、対応していかなければならないのも事実。今回は、耐震診断を経て耐震工事に着工した直後に熊本地震に遭遇し、被害を受けながらも耐震工事を進め、8月1日にリニューアルオープンを控える熊本県阿蘇郡の三愛高原ホテルに取材に伺いました。耐震診断から耐震工事に至る経緯、熊本地震の被害、リニューアルオープンに向けての取組など、杉本真一代表取締役社長に貴重なお話をお聞きしました。

 

‐「三愛高原ホテル」の概要について教えてください。

当館は黒川温泉郷の入り口に位置し、瀬の本高原の大自然が満喫できるホテルです。今年で50周年を迎え、熊本地震前は64室で黒川温泉でも最大規模でした。黒川温泉は、風情のある雰囲気で人気があり、日本全国からお客様をお迎えしています。ゴールデンウィークや夏休みはファミリー層、その他はシニア層が中心です。

〔左〕新緑の中、阿蘇⼭を望む露天風呂 〔右〕地元の幸が詰まった特選料理 オフィシャルホームページ(外部リンク

 

‐耐震工事の必要性を意識したのは、いつごろですか?

やはり、2013年の耐震改修促進法の改定(※)ですね。当館は東棟、中央棟、西棟の3棟が連なった建物ですが、耐震診断の義務化対象となっていることがわかり、それぞれについて耐震診断を行いました。結果としては、3棟すべてに耐震工事が必要で、特に西棟の耐震性が弱いことがわかりました。東棟は地震に弱いピロティ形状の1階部分に補強が必要。中央棟は1階が広いロビーで阿蘇5岳を一望できる全面ガラス張りがあり、その部分の補強が必要でした。

 

 東棟、中央棟、西棟の3棟が連なった建物

 

‐耐震診断の結果は、想定通りでしたか?

いえ、地震に弱い建物だと思ってなかったんですよ。熊本は、今まで大きな地震は起きていなかったのですが、小〜中程度の地震では被害が出たことはなかったですし、揺れがひどいと感じたこともなかったので、意外な結果でした。

 

杉本真一代表取締役社長にお伺いしました

 

‐設計はどこに依頼しましたか?また、耐震工法はどのように選びましたか?

設計は関連会社のリコークリエイティブサービスに依頼しました。当館のことをよくわかっているので、提案された工法をそのまま採用しました。中央棟は、阿蘇5岳を一望できる眺望が最大の魅力なので、この眺望を壊さない工法であることが絶対条件でした。デザインUフレーム工法を提案され、この工法なら当館の資産である眺望に影響が出ないと即決でしたね。東棟は、1階部分のピロティが補強対象だったので、眺望や景観は特に意識せず、むしろ耐震化が済んでいることがわかりやすい方が良かったので、鉄骨ブレース補強のデザインフィット工法を採用しました。

〔左〕もとの柱にフレーム部分(赤線)を拡張して強度を補強 〔右〕眺望を壊さない点を重視して選ばれたデザインUフレーム工法(施工中)

三愛高原ホテルの中央棟からの阿蘇を一望する眺めは、ホントに圧巻じゃ!この眺望を壊さない工法として、デザインUフレーム工法が採用されたのじゃ。

次回予告:

次回は、2016年4月に起こった熊本地震について。耐震工事着工直後に起こった大地震と、その後についての貴重な話が満載じゃ!

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