2016/03/01
耐震化の有無が資産価値に直結!?耐震に関わる法改正のいま
日本の建築物の耐震に関わる大きな転機は、1981年の建築基準法改正。耐震基準が大きく見なおされ、この年以前の建築確認で建てられたものは「旧耐震基準」、これ以降は「新耐震基準」と呼ばれています。
この「新耐震基準」の有効性が実証されたのが、1995年の阪神淡路大震災。約25万棟が全半壊する大災害でしたが、被害は旧耐震基準で建てられた建物に集中。耐震改修の必要性が、改めて認識されました。
阪神淡路大震災後も大きな地震が続き、何度も耐震に関わる法改正が行われ、建物の取引時など資産価値にも関わる改正も行われています。耐震に関わる法改正を追ってみましょう!
1995年(平成7年)耐震改修促進法制定
阪神淡路大震災が起きた年の12月、旧耐震基準の建物に大きな被害が出た教訓を踏まえ、「耐震改修促進法」が制定されました。
旧耐震基準で建てられ、学校、病院、ホテルなど多くの人が利用する、3階建て以上で1000㎡以上の建築物は、新耐震基準と同等以上の耐震性能を確保するよう耐震診断や改修に努めることが求められました。
2006年(平成18年)耐震改修促進法改正
新潟県中越地震など、大規模な地震が頻発したことから、さらに耐震化を推進していくために耐震改修促進法が改正されました。耐震診断や改修に務めなければならない建物の要件が引き下げられ、幼稚園、小中学校、老人ホームなどを追加。さらに、道路を塞ぐ可能性のある住宅や建築物も追加されました。
また、大きなポイントは地方自治体に具体的な数値計画を設定させたこと。自治体による対象建築物への指導や助言の強化も定められたため、自治体が中心となり、耐震化を進めていく体制を整えることとなりました。
2006年(平成18年)宅地取引業法施行規程改正
建物の耐震性が資産価値に大きく影響することを明確にしたのが、宅地取引業法施行規程の改正です。建物の売買など取引時に、旧耐震基準で建てられたものは耐震診断の有無と内容が、重要事項説明項目となりました。
これにより、必ず耐震性について言及されることになったので、耐震診断をしているかどうか、耐震改修が済んでいるかどうかが、不動産取引において重要なポイントとなったのです。
2013年(平成25年)耐震改修促進法改正
さらに耐震化を進めるための法改正が行われました。病院、ホテル、ショッピングビルなど、多くの人が利用する建築物や、学校や老人ホームなど避難に配慮を必要とする建築物は、耐震診断を行い報告することが「義務」となりました。さらに、その結果を公表することとしています。対象となる建築物も、マンションなどの住宅や小規模建築物にも拡大されました。
また、マンションなど区分所有者が複数の建築物の耐震改修を行おうとする場合、従来は3/4の賛成が必要でしたが、1/2の賛成で行えるようになりました。
耐震性が確保されている認定を受けた建築物は、それを表示できる制度「基準適合認定建築物マーク」が作られたことも、資産価値の観点からは大きなポイントです。このマークの表示があれば、安心して買主は物件を買うことができるようになり、持ち主にとっては資産価値の向上につながります。
「基準適合認定建築物マーク」
2014年(平成26年)マンション建替法改正
旧耐震基準のマンションが耐震基準に満たないと判定された場合、耐震改修だけでなく「建替え」の選択肢があります。耐震性不足の認定を受けたマンションについては、区分所有者等の4/5以上の賛成で、マンション及びその敷地の売却を行うことを決議できるようになり、その容積率制限も緩和されました。
建替基準を緩和してまで、国が旧耐震基準マンションを減らそうとしているのは、旧耐震基準マンションはそれだけ地震に大して危険性があると判断していることになります。
耐震化を促進する法律が制定されるのに伴い、耐震化の有無が資産価値にも大きく影響するように!資産を守るためには、耐震化は必須条件なのです。
執筆・編集 住まいのそなえ研究所
<参考文献:これで完璧!マンション大規模修繕
(マンション大規模修繕研究会著・エクスナレッジ発行)>